篠宮龍三.オフィシャルブログ One Ocean〜海はひとつ!

2007.11.28 Wednesday

ムービー・トリプルデプス2007 etc・・・

2005年のトリプルデプスでは自身初となる国際大会での総合優勝を果たし、その時に味わった達成感、充実感はいまでも忘れがたいものがあります。長く続いた失敗の連続やスランプを脱し一条の光を見出したかのような思いでした。

そして2006年も連覇を狙ってトレーニングを行ってきたのですが、勇んでエアチケットを買おうとしたその日、ダハブで爆破テロが起きました。この大会を狙ったテロではなかったのですが、仲間の選手が街中で爆破に巻き込まれて重症を負ってしまいました。

しかし大会は続行とのアナウンス・・・

トレーニングを重ねてきた数ヶ月が無駄になるのはなんとも悔しかったですが出場を断念しました。世界大会連覇の夢が消えてゆく・・・
苦渋の決断でしたが、連覇も記録も命には代えられません。

世界中を遠征する競技生活の中で“テロの脅威”というものを初めて身近に感じ、言い知れぬ不安や恐怖、憎悪に似た感情が心に沸き起こりました。それは本当に筆舌しがたい“ドス黒いなにか”が胸中に渦巻いているのを感じました。


そして今回、二年ぶりに訪れたダハブの街はとても活気があり、爆破の後も無事復興しているようで外国人観光客向けのおしゃれできれいなお店が増えているような印象がありました。
テロを起こしたグループは、外貨をちらつかせる外国人もそれに群がるローカルたちも許せなかったのかもしれない・・・ちょっとエキセントリックではあるけれど、やはりそう思えてなりません。

一歩街から足を踏み出せばとても質素というか、貧しい人たちの暮らしも見えてきます。子供たちはほとんど裸足で駆けずり廻っています。ですが、子供たちの表情を見ているとけっして貧しいからといって不幸ではないのだということが感じられました。日本の都会に住む子供たちに比べるととても子供らしい笑顔とキラキラした純粋無垢な瞳をしていたのがとても印象的でした。
昼とも夜ともつかない薄暗い部屋でPCやTVゲームに向かい、コンビニの弁当を好きな時に買い食いできるのが本当に豊かでシアワセな事なのかな?と疑問に思えてきます。埃にまみれて一日中駆け回っている砂漠の子供たち、自分たちの文化やライフスタイルに誇りを持ってネ。ドルなんて追っかけなくていいんだよ。 う〜ん、グローバリズムよ、なにするものぞ!


タラレバやモシモ、は意味がありませんが・・・去年もしテロが起きていなかったらトリプルデプス06に出場していたでしょう。また、去年の優勝者の総合得点はおととしの自分の総合得点よりも低かったため無難に行けばまた去年も勝てていたかもしれません。今年の総合Vとあわせて三連覇できたかもしれないと思うとやはり複雑な思いもしてきます。今年の総合Vは多分にLuckがありすぎましたが・・・

去年は出場するべきか辞めるべきか大いに悩みました。テロに屈しない姿勢は確かに強く美しいかもしれない、でも“匹夫の勇”となってしまっては精神面に大きく依存したアプネア競技でいいパフォーマンスは到底生まれないし、第一、単なるゲームに命を掛けるのは愚の骨頂だ、そう判断しての出場断念は今となってもやはり間違っていなかったと思います。出場できなかったからこそ見えてきた世界もあります。競技では勝つ事よりも負ける事が多いですし、プライベートでも様々な事があります。ネガティブな事柄も最終的には自分のパワーを出すためのポジティブなポイントに変えて行ける人こそが本当に強い人間なのでしょう。



ダハブのトリプルデプスは今年で卒業しようと思います。衛生面、治安面もさることながら、ブルーホールのボトム−90mにコンスタントで達してしまったためさらなるステップアップをはかる必要があります。また、この大会で国際大会3年連続総合Vを達成し、自分の中で“世界の総合で勝つための方程式”が確立されたことも大きな要因です。
その“勝利の方程式”を今度は他の日本人選手に伝え、そのアスリートに世界で大いに暴れてもらえればいいと考えています。ですから自分はもう総合Vに固執する必要がありません。総合Vに関しては自分に課したミッションは概ねコンプリートしたと言えるでしょう。

また自分はこの2、3年、日本記録を世界大会で出せば表彰台に上れる、総合で勝てる、というレベルまで持って行こうと考えてやってきました。そう、スロベニア世界選手権で表彰台に上った富永選手の大活躍も記憶に新しいところですよね。

サムライは世界と渡り合っています。もはや“たかが日本記録”ではないのです。



これからは本当に好きなコンスタント種目だけにフォーカスし、その世界記録を視野に入れてやっていきたいと思っています。次はやはりコンスタントでの100m越えと世界記録しかありません。

エジプト世界選手権では思うように行きませんでしたが、失敗の原因は完全に解明できました。大きな宿題ですが、それゆえにやりがいがあります。今度は失敗からだけでなく、成功してもなにかを学べるような謙虚な姿勢を身に付けたいところです。

得意淡然
失意泰然



トリプルデプスのムービーが出来上がりました
PUSH THE BOTTON

2007.11.04 Sunday

Umberto


かつての師、ウンベルトと再会した。

エジプト世界選手権はアプネアアカデミー・レッドシーのオーガナイズ

だったため、表彰式にプレゼンターとして招かれたのだ。


いまや2児のパパとなり、すっかりやわらかなオーラを醸し出していた。

以前のように世界王者として極限に生きる者が持つ独特の悲壮感や

緊迫感漂うオーラは全くなかった。


ウンベルトが日本に来てイントラコースを開催し、そこに参加したのが今から

6年前になるのだが、そのときに言われた言葉を思い出した。


「Future Japanese Champion」



そのときはひとつも日本記録を持っておらず、いつかは必ず獲るぞ!

と常に思っていた。練習では何度も日本記録を抜かしていたが、

大会になるとうまく実力を発揮できず、このまま練習チャンピオンで

終わってしまうのかな、と不安に思ったりもした。

だから自分の憧れのスーパースターに「お前が未来の日本チャンピオンだ」と

言われてまさに天にも昇る思いがした。手足が震えた。

そしてその年の秋にスタティックで初の日本記録を樹立した。6分22秒だった。

師の一言は偉大だ。



ウンベルトのイントラコースは1週間にわたり開催され、参加したわずか7名の

日本人はウンベルトと寝食を共にするという素晴らしい経験をさせていただいた。

その時にとても気さくにたくさんの話をさせてもらい、大きなインスピレーション

をもらった気がしている。

だが残念なことにその年、ウンベルトは競技を引退した。

さらに残念だったのはイタリアとAIDAが仲違いをして、この数年間

イタリアチームが世界選手権に出場しなかったことだ。

エレガントなイタリアの潜りを見たくて参加していた国もあった。

日本もそのひとつだったろう。


フリーダイビングの世界はいまやとんでもないハイスピードで

進化を続けている。レスキュー、トレーニング、セオリー、ストラテジー・・・

ウンベルトたちがAIDAを離れてこの6年、アプネアアカデミーは

世界標準とは言えないところも多々出てきてしまった。残念だ。

それが、この世界選手権に出場して、なお一層感じられた。

特にアプネアアカデミーイントラの水面セキュリティーと同イントラ

アスリートのSP前後のリカバリーのやり方だ。詳細は避けるが、

どちらもその選手のパフォーマンスだけでなく、生命に関わることもあるため

もっと広く研究して欲しい。エレガントかつ合理的になって欲しい。



TOYOTAやHONDAがF1に参戦し、その極限での経験が

新たな市販車作りにフィードバックされていくように、フリーダイビングも

競技会といういわば“極限での実験場”から得られる生のデータを次世代に

繋げる事が出来るのだと思う。そうやってAIDAはセーフティー、選手、

ジャッジ、ルールを作り上げてきた。

そういった点で、アプネアアカデミーとイタリアはAIDAと決別した

この6年、世界に大きく遅れをとってしまったと言わざるを得ない。


また、アプネアアカデミーイントラたちと話して思ったのは、競技に対して

偏った見方をしているということだ。よくありがちだが、競技はなんだか

姑息で、足の引っ張り合いをしているみたいだと思っているようだ。

とんでもない誤解だ。

自分はこれから100m、110m潜れる技術を身につけ世界を狙う。

ギオム、カルロス、デイブらは惜しげもなくテクニック、トレーニング方法

を事細かに教えてくれた。これは敵に塩を送るようなものだ。

トップになればなるほど自分の掴んだモノを惜しげもなく、喜んで他者と共

有しようとする素晴らしいスポーツマンシップを持っている。

だから回りがついてくるし、サポートしてもらえるのだ。




この世界選手権ではメダルも100mもつかめなかったため、これは単なる

戯れ言と一緒です。思うままに今の世界の現状と見比べて書きました。

自分はウンベルトをリスペクトしているし、いまでももちろん大好きだ。

でも、この記事で気を悪くされた方がいたらゴメンナサイ。



はやく世界記録を作って、師匠が見てきた世界を経験したいところです。

そして飲み屋で同じテーブルについて「最近は競技も悪くないっすよ」

なんてグラスを傾けたいところです。



2007.11.04 Sunday

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2007.11.04 Sunday

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2007.11.04 Sunday

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2007.11.03 Saturday

CNF日本新 31m 山内知子選手

2007.11.02 Friday

ムービー・コンスタント世界新112mbyハーバート

ハーバート・ニッチのコンスタントウィズフィン世界記録112mをどうぞ!


2007.11.02 Friday

結果

エジプト世界選手権・コンスタントウィズフィンが終了しました。申告96mの実技89m ポイントは81点・総合9位でした。

なんとも不甲斐ない結果に終わってしまいました。応援してくれた皆さん期待に応えられず本当にすみません。

100mを目標に定めていたのですが、海況、トレーニングの進捗状況から96mを申告せざるをえないことになり、その時点で気持ちが切れてしまっていたのかもしれません。

「96」という数字に100%コミットできていませんでした。100を申告できなかった事に対する悔しさ、苛立ち、ネガティブな感情を競技当日まで完全に拭い去ることが出来なかったと思います。

一年間この世界大会で100mを潜る事を最大のターゲットにおいてトレーニング、コンディショニングを行ってきましたので、申告100mではないこと、100m行けないことによるモティベーションの低下が失敗の最大の原因だと思います。

テクニック面ではエリックファッタの紹介したフレンゼルテクニックを改良し、いわばバージョン1.0をアップグレードして自分なりに“セカンドマウスフル”を追加しバージョン2.0〜2.5へと進化させる事が出来たと思います。しかしそれに慢心せずさらに見直し、“セカンドマウスフル”を最終的に行う深度を再設定して3.0〜3.5へと昇華させる必要があったと思います。トリプルデプスの勝利に浮かれていないつもりではいましたが“目標100m”へ向けて細かなテクニックやプロセスの再確認が疎かになっていたことは否めません。また仮にテクニックを見直す機会があったとしても時間切れになっていたのかもしれません。

そして“2.5”ではまだ脆弱であり、“3.0”へと大幅にバージョンアップしなければ95mがMAXであり、100m越えは遠く、競技会などの不安定な場面では90mがMAXになる、ということが分かりました。そのため、耳が抜けず、途中で引き返してきました。90mが今の自分の実力なのです。悔しいですがこれが現実です。


今回の教訓としては好調の時ほど細かな点を見直す必要がある、ということでしょう。

負け惜しみになりますが、メダルを獲るよりも大きな学び、収穫、気付きがありました。

成功は偶然、失敗は必然なのです。

“ファーストマウスフル”と“セカンドマウスフル”を行うこと自体は今シーズンでマスターできました。ファーストは30m、そしてセカンドをどの深度に設定するかがポイントになります。カルロス、ギオム、デイブらに聞いて廻っていますがみんなそれぞれ違う深度でのセカンド、あるいはラストマウスフルを行っています。自分も自分なりのポイントを探し出そうと思います。

セカンドを行う深度の適切な設定と身体的な適応能力を身に付ければ100mオーバーそして110m台が見えてきます。

ここに気がつけたことは失敗したからこそ、なのです。ですからまったく気落ちしていません。大きな大きなプレゼントを頂いた気持ちです。

トリプルデプスでは総合優勝し、結果がついてきました。世界選手権では失敗したことで、次へのステップが見えてきました。

どちらも自分にとっては素晴らしい経験です。

今シーズンの大会はこれで全て終了です。

来シーズンは100m越えと世界記録を狙います。



応援ありがとうございました。




2007.11.01 Thursday

申告

苦渋の選択でした 申告は96m 連日大荒れのためどんな海況でも成功出来る申告にしました本当に悔しいですが海には勝てません
100mはまた別の機会になりますが表彰台はまだあきらめたわけではありません

最後まで何が起きるかわかりません

運を引き寄せたいです



2007.10.31 Wednesday

Big Wave

今日は女子のコンスタントウィズフィン競技日のはずでしたが大荒れのコンディションのためキャンセルになりました
明日の男子コンスタントウィズフィンにミックスして行われることになります
女子はロシアのナタリアがなんと95mの世界記録申告!続くUKの超新星サラは88m!?と控え目な申告
日本女子もラフコンディションを懸念してか控え目な申告となっています

自分もこれから申告をしにいきたいと思います

明日はいよいよ今年の大一番、千秋楽を迎えます

最後まで応援よろしくお願いします


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プロフィール

篠宮龍三
篠宮 龍三.
しのみや りゅうぞう
プロ・フリーダイバー

2004年 日本人初のプロ選手となる。

2005年 世界ランク1位入賞。(フリーイマージョン種目)

2005〜2007年 国際大会三年連続総合優勝(エジプト、フランス、エジプト)

2008年4月バハマにて、アジア人初の水深100mに到達。世界ランク2位入賞。(コンスタント種目)

2009年4月にはジャック・マイヨールの自己最高記録の水深105mに到達。同年12月には水深107mのアジア記録をマークし、マイヨール越えを達成。(コンスタント種目)

2010年4月にはバハマにて水深115mの現アジア記録を達成。(コンスタント種目)
同年7月は自らオーガナイザーとなり沖縄で世界選手権をアジア初開催。また日本代表キャプテンとして参加し、銀メダル獲得。

2013年5月カリビアンカップにて水深56mのコンスタントノーフィンのアジア記録更新。同年10月バリ大会にてコンスタント種目優勝。

2014年12月バハマ大会にて水深66mのコンスタントノーフィンのアジア記録更新(通算37個目のアジア記録)

2015年4月バハマ大会にて総合準優勝。アジア人男性初のメダル獲得。

国内初のプロ選手として国際大会を中心に参戦。2016年10月、18年間の競技生活に幕を閉じる。現在は沖縄でスクールや海外ツアー、大会等を運営する。

OneOceanを自身のメッセージに掲げ、海洋保護を訴えるイベントをプロデュースしている。

一般社団法人沖縄フリーダイビング協会を立ち上げ、代表理事として沖縄でのフリーダイビングの振興を行う。

本の紹介
素潜り世界一
心のスイッチ
ブルー・ゾーン